無慈悲な部長に甘く求愛されてます

「冴島部長って笑うの!?はじめて見たんだけど!それとも私の目がおかしいのかしら……もしかして、今のはまぼろし?」

「み……見間違いじゃない?」

 完全に混乱状態に陥っている彼女に、私は躊躇しつつ答える。

 理由はわからないけれど、冴島部長はわざと鬼上司の仮面をかぶっている。

 だからきっと、笑った顔を同僚に見られるのは本意ではないはずだ。

「やっぱり見間違いか。そうよね。ああ、びっくりした」

 ほっと息をついている真凛を見て、ちょっと心苦しくなった。

 部長が私に笑顔を見せてくれるのはフルーヴを通して関わりがあるからだけど、クリスマスの夜のことを話さずにそれを説明するのは難しい。

 あの日のことは真凛にだって話せない。

 秘密にすると、冴島さんと約束したのだから。




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