無慈悲な部長に甘く求愛されてます

 仕事をしていると、時間の流れはあっというまだ。

 関係企業の資料を整理していたら、いつのまにかお昼になっていた。

 休憩もとらずにパソコン画面に向かっていたせいで首の付け根に痛みを感じる。

 そろそろマッサージに行きたいな。

 チームセクレタリーになってから忙しい日々が続いていて、休日も死んだように眠ってばかりだった。

 唯一の例外は部長と出かけた二週間前の土曜日だけ。

 今考えると、あの日は私にとってとてもいい気晴らしになった。

 慣れない仕事に従事して普段以上に気を張っていたから、久しぶりに外出して美味しい食事を食べられたことで英気を養えた。

 そう考えて、はっとする。

 もしかすると、冴島さんはそれすらも見越して私を誘ってくれたのかもしれない。

 いくつものプロジェクトを同時に抱え、常に先のことを考えている冴島部長だからこそ、あり得る話だ。

 そう思ったとたん、頬が熱くなった。

 脳裏によみがえってしまったあの日の出来事を、首をぶんぶん振って打ち消す。

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