無慈悲な部長に甘く求愛されてます
「今日は宅配弁当なんですね」
「ここのところ仕事が立て込んでて、外に出れないんだよね」
私がレンジからお弁当を取り出すと、池崎さんが入れ替わるようにまだ温かいはずの宅配弁当を入れてスイッチを押した。
「俺、熱々が好きだからさ」
そう笑って、私の手元をちらりと見る。
「いつも弁当作ってきててホント偉いよね小松ちゃん」
「いえ、最近は出来合いものばっかりです。そういえば今日は小籠包を持ってきましたよ」
「大慶食品の担当からもらったやつ?」
「はい。おいしいし、レンジで温めるだけだから便利ですよね」
大慶食品の小籠包は、チルドとはいえこだわりをもってつくられている優れた商品だ。
価格も手頃で本来なら知名度があってもおかしくないのに、従業員が百人に満たない小さな工場ということもあり、あまり流通していない。
もっと安定して供給されればいいのに。いつも行くスーパーに売っていれば、私は絶対に買う。
そう思った瞬間、ひとつの考えがひらめいた。
「小松ちゃん、相当おつかれなんだね」
ぽんと肩を叩かれ、はっとすると、池崎さんが真正面に立って私の顔を覗き込んでいた。