無慈悲な部長に甘く求愛されてます
冴島部長はたしかに仕事に厳しい。態度も雰囲気も威圧的で、めったに笑わない。
だけど、間違ったことはなにも言っていない。
スケジュールだって、年間目標を達成するために与えられた少ない時間を効率よく組み立てつつ、実行部隊の負担をすこしでも軽くしようと苦慮した跡が見える。
しかも、わずらわしい案件はほとんど部長自身が引き受けている。
私はいつも最後まで会社に残って仕事をしている冴島さんのことを思った。
《仕事が忙しすぎて彼女はしばらくいないんだ》
そう言って笑った顔を思い出す。
冴島部長は厳しいだけじゃなくて、自身を犠牲にしながら部下の能力を最大限に引き出すような仕事の仕方をしている。
歯がゆかった。
どうして誰も、そのことに気がつかないのだろう。
そういう私だって、チームセクレタリーになるまでは冴島さんの大変さなんてちっとも知らなかったのだけれど。
「俺が女だったら、あんな冷たい人間とは付き合いたくないな」
「冴島さんは」