無慈悲な部長に甘く求愛されてます
すっと手を上げて発言権を求めた生産部門のメンバーに、一同の目が集まる。
「魅力的な話ではありますが非現実的です。なにせ大慶食品の製造ラインはすでにパンク寸前です」
「そうだよな。所詮夢物語だ」
盛り上がった空気が沈んでいくなか、ずっと黙って話を聞いていた冴島部長が顔を上げた。
「いや、それくらい大胆な手を打っていかないと、大慶食品の歩留まりは改善できない」
ひとり立ってミーティングの流れを見ていた宮田くんが、救い主を見つけたように部長を見やる。
「しかし冴島部長、大手のPB商品となると大慶食品の小さな工場では到底製造が間に合いません」
慎重派の意見を受けとめて、冴島部長ははっきり言い切った。
「もちろん、設備の見直しは必要だ。新工場の設置も念頭において、まずは最新の製造設備を導入できるようCEOに直接掛け合ってみよう」
冴島部長の覚悟と決意に引っ張られるように、その後の打ち合わせは白熱したものになり、議題をすべて片付けるとメンバーは忙しそうに席を立った。