無慈悲な部長に甘く求愛されてます
ほかの同僚に遅れまいと立ち上がった宮田くんを、部長が呼び止める。
「宮田、さっきのはいいアイデアだったな。おまえが考えたのか?」
隅の席で資料を片付けながら、私はつい顔を上げた。
宮田くんが今日のミーティングで俎上にのせたのは、ついさっき、私が彼に提案した内容そのものだった。
じっと息をつめて見守っていると、宮田くんは私を見ることもせず自信たっぷりにうなずいた。
「はい、俺が思いつきました。販売先のリストを精査していたら、城木興産が目にとまったので」
「そうか。よくやった」
宮田くんは無表情だったけれど、唇をぎゅっと噛み締めていた。
喜びを顔に出さないように我慢しているのだ。部長からめずらしく褒められて、嬉しくないわけがない。
ドアを出ていく同期の彼の背中を見送りながら、なんとなくやりきれない気持ちになる。
美味しいところをもっていかれるという表現は、こういうときに使うのかもしれない。