無慈悲な部長に甘く求愛されてます
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バレンタインが過ぎたとたん、街に異常なほど溢れていたチョコレートの広告がきれいになくなった。
世の中の移り変わりはあわただしい。
浮き沈みを繰り返す人の心と同じように、街もイベントに合わせて色を変えていく。
つい一昨日まで色とりどりのチョコレートが販売されていた改札外の特設店舗には、いまや地方の特産品が並んでいる。
ちょっと前まではお正月用のおせち、その前はクリスマス用のかわいいスイーツだったことを思い出しながら、私は腕時計に目を落とした。
もうすぐ夜の七時。
待ち合わせ場所である地元駅の改札前で、帰宅を急ぐサラリーマンやOLたちをぼんやり眺め、手に提げた紙袋を持ち直す。
私が退社するとき、冴島さんは会議中だった。
待っていようかと思ったけど、ほかの社員がいるなかで一緒に帰るのもどうなのだろうと思い、あらかじめ決めてあった待ち合わせ場所に先に来てしまった。
でもやっぱり、待っていたほうがよかったかな。
そもそも、部長は忙しいはずなのに、帰ってこられるのだろうか。