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証/薬指

あたしは佑也のことが好き。だから駿平に助けてほしかった。佑也はもう居ない。駿平には好きな人が居た。隆平はあたしのことが好き。駿平には彼女が出来た。
延々と静かに怒鳴り続けるあたしの話を相槌だけで聞いてくれた。

話し疲れたあたしに、隆平が言った。

『駿には好きだって言わないの?』

「別に、好きって訳じゃなくて好きになりそうだっただけ。それにそんな奴の幸せを願えないほど、あたしは小さい女じゃない」

喋れば強がったことしか出てこない。それは隆平も分かってくれていた。

『俺と付き合おうよ。絶対、泣かせない』

心に穴が開いたあたしには、凄く暖かい言葉だった。

10月4日、隆平に幸せを預けた。
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