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本当は、駆け寄って抱き締めて、涙を拭ってあげたかった。それさえももう許されない。

あたしが立ち止まったのは、隆平を忘れないため。
あたしがふりかえったのは、隆平に忘れられないため。
あたしが下を向くのは、軌跡を確認するため。
あたしが歩き出すのは、佑也が望んだから。

軌跡を確認して、もう1人なんだって実感した。
前を向いて、佑也と目指した未来を見据えた。

駿平との記憶も、隆平との記憶も全部、思い出に変えなければならなかった。
記憶が思い出に変わる瞬間の痛みは、何度味わっても慣れることはなかった。
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