好きって言えよ、バカ。
「ただいまー」
シャーペンを握りしめながら宿題と格闘していると、玄関の方から声がする。
この声は葵くんだ。
「もうこんな時間……」
リビングの壁に掛けられている時計を見ると、もう1時近くを示している。
いつの間にかお昼も過ぎちゃってたんだ。
今日は午前中の練習だけだった葵くんが、部活から帰ってきた。
「あれ?絃ちゃん1人?」
「うん、雅さんはバイトで、蓮くんは用事があるって出かけてるの」
「そっか、そうなんだ」
ふーん、と考えて葵くんはふにゃりと笑う。
「な、何っ?」
その不敵な笑みに、嫌な予感しかしない。