好きって言えよ、バカ。



「絃ちゃん、どうかした?」



もう授業が始まっているというのに、忙しない私に気づいた遼くんが、小声で私に声をかけてくる。



「シャーペンが見当たらなくて……どこかに落としてきたのかな」



さっきの時間は体育だったんだけど、その前は確か移動教室で……



理科室に忘れてきたのか、それとも移動中に廊下に落としてきちゃった?



それにしてもどうしよう。



そうしているうちにも黒板には白いチョークで文字が埋め尽くされていく。



早く板書しなきゃいけないのに。



「……?」



「はい、これ」



うぅっと肩をすくめて困っているところに、ずっと伸びてきた手。



その中には、シャーペンが1本握り締められている。



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