好きって言えよ、バカ。




私が雅さんの腕の中で驚いているなんて、雅さんは知らない。



「お前らが絃ちゃんに手を出すなんて、100万年早ぇーんだよ」



「ちっ」



「行こうぜ」



面倒くさいと思ったのか、2人組はその場を去っていった。



その場に私と雅さんの2人きりになってから……



「絃ちゃん、大丈夫?」



「怖かった……っ」



雅さんがさっき座っていたベンチまで連れてきてくれて、座った瞬間涙が溢れ出てきた。



本当は泣きたいくらい怖かったんだ。



雅さんが震える私をそっと抱きしめてくれる。



私が落ち着くまで、雅さんはずっとそうしてくれていた。


< 61 / 306 >

この作品をシェア

pagetop