ぼく の ななちゃん 。 《短編》
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柔らかな頬に空気をいっぱい溜め込んでまあるく膨らまし、僕を睨みつける彼女は、表情の通りお怒りの様だった。


「ごめんね。」


少し甘ったるい声で愛嬌を振りまき、顔を覗き込んでも微動だにしない。今回の食べ物の恨みは相当根深いみたいだ。無言で僕を睨み続けて、時折、息苦しいのかぷはっと息を吐き出し、また大きく吸い込んでお怒りの表情に戻る。そして、僕と空っぽの容器を交互に見つめ、怒ったり、悲しんだりと忙しそうだ。


「ななちゃん、こっちおいで。」

「やです。」

「ななちゃん。ごめんね。」


本当はその顔が見たくて意地悪したんだ、なんて言えなかった。ころころ変わる彼女の表情が可愛くて、ついついこういうことをしてしまう。あまりにも可愛すぎて緩む口元が隠しきれない。こんなに怒られているはずの僕のほうが、彼女より余裕ぶっているのがまたお怒りの理由の一つなのだ。


「ななちゃん。」


本当はね、ちゃんと買いなおしたプリン冷蔵庫に入ってるんだよ、と言いたいけど、見つけた時の大喜びする表情よりも、今はその珍しく怒った表情を見ていたいから、まだこのことは教えてあげない。




》end.


~ 追記 2017.12.06
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