契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
車を停めたら、ちょうど家の前にある小さな花壇の手入れをしている老婆の姿が見えた。

「キヨさん」

先生が車を降りて声をかけると、女性は振り返ってしわくちゃな顔で笑った。

「あら、悠くん。久しぶりねえ」

「キヨさん、俺結婚するんだ。妻の凛」

先生に促されて車を降り、紹介されるがままに頭を下げた。

「凛と申します。よろしくお願いします」

「あらあら、まあまあ。よかったわねえ」

キヨさんは曲がった腰の後ろに手を添え、ゆっくり私のそばまでやって来て、また顔をくしゃくしゃにして笑った。

「こりゃまた美人さんだねえ。悠くんのことよろしくね」

「は、はいっ」

キヨさんは娘さん夫婦と孫たちと同居しているらしく、娘さん夫婦とは面識がないというので家にはお邪魔せず車に戻った。

「うちは共働きだったから俺はひとりで遊んでて、キヨさんがよく相手してくれたんだ。
お菓子をくれたり、天気が悪いと心配して見に来てくれたり。
だから、キヨさんには紹介しておきたかった」

「そうなんですね」

運転する先生の横顔はとても穏やかで、こんなところにも先生の人柄がうかがえる。
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