契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
その足で区役所へ向かい、婚姻届を提出した。

なんの実感もないまま私は相沢凛から風間凛に変わり、さらに翌週には引っ越し業者が来て、先生の住んでいる三十五階建てのタワーマンションへ荷物を移した。

「これで新婚生活がスタートできるな」

「そうですね。不思議な気持ちです」

室内を三百六十度眺める。

シンプルなモノトーンが基調になっているリビングダイニングは、私が住んでいた八畳一間のアパートとは比べ物にならないくらい広い。

大画面のテレビの前にはガラスのローテーブルと革製の四人掛けのソファ。

ソファは先生が仮眠をとれるようにと大きめの物を使っているらしい。

家具は全てイタリアの有名メーカーのもの。

ファミリー用のダイニングテーブルも同じで、日本の代理店では現在在庫切れになっているため、再来週届く予定になっている。

半月前には予想もしなかったことが今起きていて、なんだか長い夢でも見ているようだ。


「凛」

「はい?」

振り返ると、先生はパノラマビューの窓の前に立ち、意味深に微笑んでいた。

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