契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
翌日の夕方、悠さんは糖尿病センターのカンファレンスで遅くなるため、歩いて病院を出た。

悠さんからは友達のところに泊まれるようならそうしてほしいと言われたけど、毎日こんな怖い思いをする生活が続いたら悠さんが困る。

あの人のせいで引っ越しまでしたのならなおさらだ。

マンションへ帰ったら、女性は今日もマンションの前にいて、ばっちり目が合った。

「ちょっと」

ずかずかと私のもとへ歩いてくる彼女の声は、昨日よりもさらに怒っている。

「先生はどこにいるの?先生のところへ連れて行って!」

これ、マンションの他の住人にも言って回っているのかな。

子連れ世帯だっているのに、みんな怖い思いをしているんじゃないだろうか。

できることなら今すぐにうちの病院の精神科へ紹介状を書いてあげたい。

もっと言えば、顔色が悪いから栄養相談もしてあげたいくらいだ。

「…その先生はここにはいないと思います。
ほかの住人に迷惑なので、やめていただけませんか?」

彼女はまた爪をギリギリとかみだした。

正直怖い。だけど…悠さんを守りたい。

ごくりと唾を飲んで言い放つ。

「先生だって、きっとあなたを迷惑がっています」

その瞬間に彼女の目つきが変わったのがわかった。

カバンをゴソゴソ漁り、夕日に反射して光るなにかが見えた。

それがなんなのかはすぐにわかって、一瞬にして血の気が引く。

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