契約結婚なのに、凄腕ドクターに独占欲剥き出しで愛し抜かれました
運のいいことに、今日は腰痛ベルトを着けていた。

マジックテープでおなかを交差するようにできているから厚手だし、逆手で振り下ろすなら、全力で押し返せばなんとか切り抜けられるかもしれないと脳が瞬時に判断したのだ。

「…ちょっとずれちゃったかなあ?」

着ていたブラウスを少しめくって見てみると、ベルトの少し上が切り傷になっているけど、血が滴るほどじゃない。


エントランスの外でほかの住人が目撃していたようで、ほどなくして警察が到着した。

少し話をしたあと、診断書が必要になりで病院まで行き、処置を受けたあとに課長が飛んできた。

「ちょっとちょっと!大丈夫?風間先生のストーカーだったんですって?」

「そうみたいです」

「よかったわねえ。腰痛ベルトしてなかったら大変なことになってたんでしょ?」

「そうですねえ。不幸中の幸いでした」

正直、腰痛ベルトをしていて助かったという事実がおもしろおかしく広まるんじゃないかと戦々恐々としている。

『まさか風間先生の奥さんが腰痛持ちだなんてねえ』なんて噂話が出回ったら恥ずかしくて生きていけない。

悠さんには当然バレるだろうけど…

一生秘密にしておこうと思ったのに、まさか買って数日でバレることになるとは思わなかった。

「…課長。みんなには腰痛ベルト内緒にしてくださいね」

「…どうしよっかなー」

課長は意地悪にニヤリと笑った。

< 68 / 175 >

この作品をシェア

pagetop