ブラックサンタクロース


「……知らねーよ」

「それともわたしとこうしていて、それでドキドキしてます?」

「っ、黙れ」


あっ……いま、照れましたよね?

そうですよね?


「ジンさん可愛い」

「こんなオッサンに可愛いなんて言うのお前くらいだ」

「だって可愛いもん」

「ハイハイ」

「ジンさんモテるでしょ」

「……別に」

「間がありました」

「たいしてモテねぇよ」


嘘だ。絶対職場とかでモテてる。

学生時代だって。人気ありそう。


「ほんとはもっと色っぽい女の子とこういうことしたいですか?」


わたしみたいなタイプは規格外ですか。


「アホか。お前にじゃなきゃ、こんなこと――」


言葉を途中で切ってしまうジンさん。


「ジンさん、わたしにじゃなきゃって?」

「……なんでもない」

「他の子にはしないってことですか?」

「…………」

「わたしにだけ、してくれるんですか?」


広い胸板に耳をあてると聞こえてくるのは心音。


ドクンドクン、と激しく揺れている。


わたしを思ってこんなにも動いているの?


もしもそうだというのなら、なんて素敵なんだろう。


< 124 / 214 >

この作品をシェア

pagetop