ブラックサンタクロース
突然目の前に現れた――、黒ずくめの男。
「誰だてめぇ!?」
「どこから入ってきやがった……!」
慌てる男たちとは裏腹に
胸をときめかせる、わたし。
ドクン ドクン
心臓が大きく鼓動している理由なんて
ひとつしか、ない。
「どこから? ンなもん……エントツから、と言いたいとこだが。このご時世に、エントツのある家が少ないもんでねえ。窓から入らせてもらったよ」
落ち着いた口調で、それでいて冗談まじりに話す、サンタクロースを名乗る男。
「ふざけんなオッサン!」
「何階だと思ってンだよ、ここ」
「なんのカラクリか知らねーが。不法侵入だろ」
血色の悪い、まっ白な顔。
それを半分覆うのは、真っ黒な前髪。
190はありそうな、長身で
黒のロングコートを羽織っている。
――――間違いない
「サンタ、さん」
わたしがつぶやくと、
「よお。大きくなったな」
そういって、不敵に微笑む。