ブラックサンタクロース



――それだけならまだしも


『美しくない』


あろうことかリョウコは、僕を貶(けな)した。


『アマリ。君は生まれ持ったものは美しい。だけど仕事はそんな甘いものじゃない。失格よ』


リョウコにそう言われた僕は、それまでは色んなところで手を抜いていたけれど、やる気を出し始めた。


僕が本気を出して認められないわけがないから。


案の定、誰もが僕を認めた。


その道のプロも。

自分よりずっとはやくレッスンを始めた人間だって。


中高生向けの雑誌で人気が急上昇した。

そんなのは序の口さ。


レギュラー番組だって手に入れたし。

CMのオファーも来ている。


『そんな小さなとこにいないで、うちに来ないか』


大手の事務所から、声をかけられた。


そう。

僕は、多くの人間から評価されているんだ。


でも

リョウコ、なんて言ったと思う?


『好きにしなさい』


だってさ。

ふざけるなって思ったよ。

僕のこと拾っておいて無責任だよね。

てっきり僕は必死に引き止められると思った。

行くな、ここにいろって。


そしたら『仕方ないなぁ』って

鼻で笑ってやってもいいと思っていた。


なのに。

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