ブラックサンタクロース


本当に、

ほんの一瞬の出来事――――だった。


「莉音……!」


触れられることなく

切り刻まれる、なんて。


「くんのはやいよ。……オジサン」

「人の家に無断で上がり込むなんて。(しつけ)のなってないガキだな?」


パラパラと

床一面に散らばるのは――、わたしの髪。


「ちゃんと……傷つけてから返したかったのに」

「お前モテねえだろ」


目に見えない速さで髪を切られたわたしは

次の瞬間には、


「……どうして? どうして、ひっそり生きてるの」

「あ゛ぁ?」


――――ジンさんの、腕の中にいた。


「きみ。まあまあ強いのに」


ピンチに駆けつけてくれるなんて

やっぱりジンさんは、わたしのヒーローだ。


「驚いた。まさかとは思ったが――お前、気配が消せるんだな」
< 186 / 214 >

この作品をシェア

pagetop