ブラックサンタクロース
「たしかに世界は狂ってやがる」
「そうでしょ。そう思うでしょ?」
「壊れてしまえばいいと。思ったことがないわけじゃ、ない」
「いらないよね」
「それでも。今の俺にとってこの場所は――この世界は。失いたくないものだ」
自己陶酔しているかのように見えたXが
ジンさんの言葉に、目を見開く。
「大半のモンは汚ねえが。捨てたものでもないと、そう感じる瞬間は、たしかに存在する」
「……ああ。そっか。エサの前だから? そんな偽善者ぶんの?」
「コイツは。莉音は――餌なんかじゃない」
「クイモノでしょ。とってあるんでしょ。いつ食べんの? ねかせれば美味しくなるの?」
「莉音は、俺の大切なヒトだ。チビ相手にオッサンがマジになるのは、いささか大人げないと思って静かにしてやってるが。次に触れようとしてみろ――殺してやる」