ブラックサンタクロース


Xが知りたいのは

どうして自分が生まれてきたのか、ということ。


それって

わたしといて理解できるようなものなの?


「…………名前」


わたしのつぶやきに、Xが耳を傾ける。


「あなた、名前はあるの?」

「え?」

「みんなから"X"って呼ばれているでしょ」

「……ないよ」

「ほしくない?」

「……名前……か」

「わたしが。つけてあげても、いいよ」


ジンさんが、ため息をつく。


「そんな悠長なこと言ってられないようだな」


――――バリン


窓ガラスの割れる、

大きな音が鳴り響くと同時に


「ったく。玄関からにしろと、何度言わせる」


やってきたのは、天使のような、悪魔だった。

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