ブラックサンタクロース
わたしね、サンタさん。
昨日のことのように覚えてますよ。
「初めて見たときから。ずっと。忘れられなかったんです」
パパがママを刺して
わたしに向かってきたとき、ママが、パパを刺して。
パパも、ママも、動かなくなった。
「あなたは一人ぼっちになったわたしの元へ、一番にきてくれた」
「だから?」
「わたしのこと、抱きしめてくれた」
「……そんなことしたかな」
あなたは忘れてしまったかもしれませんが。
わたしは、ハッキリと覚えています。
「あの日、わたしは、あなたに――」
「お前の親から『あるモノ』を“頂いた”」
あなたに、恋を、したんです。
「あの日……サンタさんは、プレゼントをあげるんじゃなくて、もらいにきたんですか?」
「ああ」
「では。今宵わたしも、サンタさんに、なにかプレゼントできますか?」
「…………」
「ねえ。サンタさん」
「お前からは、要らない」