ブラックサンタクロース


――――ズキン


「なんで……」


サンタさんは、なにも答えない。


わたしはなんの役にも立てないの?

わたしは、あなたから、求められないの?


そこのゴミ扱いした男たちには

サンタさんに与えられるものがあるのに。


もしかして


わたしが……

“悪い子じゃない”と判断したから?


「さて。いただきますか」


男たちの胸元に手を突っ込み



えぐり取った、なにかを、口に含んだ。



その光景にゴクリとつばを呑み込む。


とても、奇妙なのに。

とても、美しい……。


「お前の両親が死んだとき。父親が変死体だった。それは、聞かされたか?」

「……はい」


それは、ごく一部の警察とその関係者、そして唯一の遺族であるわたししか知らされていない真実。


むごさから、一般公開されていない情報。


「パパから心臓がなくなっていました」

「その通り。どこにいったんだろうな?」

「……サンタさんが、食べたんですか」



今、呑み込んだみたいに。



「そうだ」


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