ブラックサンタクロース


――――10年前の、今日



あの日は

三ヶ月以上食事をとっておらず、衰弱しかけていた。


獲物を探す気力もなかった。


いっそ、このままくたばってしまおうかという考えさえよぎった。


すれ違う人間を襲えば生きながらえることはできるとわかっていても、命を犠牲にして自分が生き延びる理由も見つからなかった。


すると、漂ってきた。


死体(エサ)の香りが……。


すぐ近くの家から。


気づいたら俺はそこへ向かった。


頭で行きたいと考えたわけじゃなく

俺の身体が自然とそうしていた。


本能が、生きようとしていたのだと思う。


そこには、

まだあたたかい2体の死体と

ひとりの幼い少女がいた。


そう。


それが、莉音だった。


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