ブラックサンタクロース
たしかに、そう思っていた時期もある。
だからこそ人間と関わり合いを持とうとしていないわけで。
だが、今の俺はそんなに優しくはない。
容赦なく喰う。
『悪』とみなしたヤツらは。
「心配無用だ」
「ほんとかなぁ」
「むしろアイツの存在が……」
「?」
莉音がいてくれるから今日も生きてみようと思えてくるなんて言うとバカにされるだろうから、死んでも言わねぇ。
「……僕が、食べちゃおうかな」
「は?」
「あの、莉音って女の子」
「お前それ……本気で言ってるのか?」
「あーあ、怖い怖い。そんな顔で睨まないで? ジョークだよ」
「笑えねぇな」
「美味しい心の育て方、知らないわけじゃないでしょ?」
「…………」
「まずは、言わずもがな生まれたての赤ちゃんの真っ白な心。あれは本当に美味しい。それから、自分に惚れてる女の子の心がもう最高。絶品なんだよ?」
なんて残酷なんだろう。
俺たちの生きる世界は。
「僕はあの子に興味がない。だってさ、キミしか見えてないんだもん。だからこそキミはあの子を食べるべきだと思うなぁ?」
「…………」
「10年間キミを思い続けた心なんて。もうそれ以上美味しいものないんじゃない?」