ブラックサンタクロース
「途中でなにか買って来ればよかったな」
黒いコートを脱ぎながらそんなことをつぶやいたサンタさんは、コートの下にはタートルネックの黒い服を着ている。
ああ今すぐその胸に飛び込みたいです。
「買いたい物があったんですか?」
「お前のな。腹減ってねーか」
「……そんなに」
「だけど夜飯喰ってねぇだろ」
「そんなの、よくあることです」
「おいおい。もっとお前は肉つけろ」
「その方が好みますか?」
「は?」
「サンタさんが好むなら体重増やす努力します」
「……好きにしろ」
真っ黒な本体のウォーターサーバーから透明なグラスに水を汲むとそれをグイッと飲んだ。
「お水、飲めるんですね」
「水くらいはな。お前も飲むか?」
口移しで欲しいです。
「……いえ」
いっそ今飲み込まれた水になりたいと
サンタさんの口元を見て考えずにはいられない。
「あの。冷蔵庫が見当たらないですが」
「必要がない……って、なにウロついてんの」
「いえ。なんていうか。あまりにも生活感がないなと思いまして」