ブラックサンタクロース
食器棚に食器がないのも調理器具がないのも『食事』の仕方が違うから当然といえば当然。
それでも。
本当に、ここで生活しているのかと思うくらいの生活感のなさで。モデルルームにでも連れて来られたような気分だ。
「香りが……ない」
「ああ。それは、鼻が利くから。余計なもの置きたくないんだ」
香水はもちろん、シャンプーや整髪料、洗剤、芳香剤、なんでも無香料なのかな。
「音も。ないです」
「耳も無駄にいいからな。時計は秒針のないものにしているし。電子機器の電源は元からたっている」
「省エネというか。エコですね」
「そうか?」
「夜、何時に眠りますか」
「適当」
「朝は何時に起きます?」
「それも適当」
「こんなにいい家に住んでますがお仕事はされてますか?」
「おいおい、尋問かよ」
「ニートですか。それともヒモですか?」
「心外だねぇ。俺、これでも公務員だぜ?」