ブラックサンタクロース


アマリの言い分に反論するつもりはない。


だが、『助け合い』の精神を幼い頃に植え付けられた人間にそんな主張は通らない。


社会的弱者を支援する制度がたくさん存在するように、人権は、守られている。


『他人を傷つけてはいけない』


そんなルールが当たり前のようにある。


そんな世界で、俺たちの存在は、

どうあがいても『悪』でしかないだろう?


なのに俺は。

莉音を、受け入れてしまった。

突き放すことなんてできなかったんだ。


窓の外に目を向けると、アマリが大きな白い翼を羽ばたかせ飛び去っていくのが見えた。


その姿はあまりにも美しく

悪魔というよりは天使のようで。


なあ、アマリ。


俺たちは滅びゆく種族なのだろうかって

そんな考えがよぎってしまうときがあるんだ。


……人間と分かり合えることなんてない。


パック詰めされた豚が、

生きている間に人と理解し合えることなんて、永遠にないように。
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