ブラックサンタクロース
ザーザーと聞こえていたシャワー音が途端にやむ。
やがて、バタンと風呂場の扉の閉まると足音がこっちに近づいてくる。
俺の耳に自然と入ってくる情報量は多い。
それに慣れ、数多く捉えたものから必要なものを選びそれ以外を聞き流す努力はしているが、それでも、聞くべきものでもない音は無限に入ってくるわけで。
つまりは、莉音がシャワーを浴びていた間、ずっとその音から彼女の様子は伝わってきたわけで。
嫌でも想像してしまう。
嫌じゃないなら、尚更。
(思春期男子か、俺は)
コホン、と咳払いしたとき。
「サンタさん」
莉音がバスタオル一枚で俺の前に姿を現した。
ほっそりとした、火照った身体。
濡れた髪から、ぽたぽたと水滴が落ちている。
「いつも借りてる洋服が、見当たらなくて」