いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
目覚ましの音が聴こえて意識が浮上する。
最初に見えたのは間仕切りにしている木製のシェルフで、そこに飾られたドライフラワーの入った瓶をぼんやりと眺めた。
こんな夢を見るなんて、昨日、タルトタタンを作ったからか。
だけど、夢と割り切ることができないのは、いち君のお母さんの言葉があるからだ。
『どうか、はじめをよろしくね』
それが、いわゆる死者からのメッセージのようで。
私はまだ覚醒しきっていない頭で、約束を守らないとと思いながら体を起こした。
と言っても、結婚をするという結論が出たわけではないので、今のところは幼馴染として約束を守るというのに留まるのだけど。
というか、いち君に惹かれてることは自覚してるくせに結婚に踏み込めないのは慎重すぎ、だろうか。
いやでも惹かれてるイコール結婚にはならないのは普通だよね。
でもこれ、うちの母だったらとりあえずプロポーズ受けてるんだろうなぁ、なんて考えが一瞬過ぎた辺りで、スマホが再びメロディーを奏でる。
アラームは停止したはずなのにとよくよく見れば、スマホは母からの着信を告げていた。
母のことを考えた瞬間に母からの電話って、変なところで親子の絆パワーを発揮してるなと意味もなく考えつつスマホをタップする。