いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
やがてまたスマホをポケットに戻し、いち君は話す。
「お礼がしたいんだ」
「お礼?」
いち君が端正な顔をにっこりとさせると同時、冷たいアイスアップルティーが運ばれてきた。
シロップも何も入れずストローに口をつけて、ひとくち喉を潤す私に、彼は言った。
「タルトタタンのお礼」
その言葉に、私は目を丸くして頭を振る。
「お礼なんていらないよ。私が勝手にやったことだし」
いち君の為に作ったりんごのタルトタタンは、お礼なんて一ミリも期待せず作ったものだ。
彼の好きなものを食べたら、少しは元気が出るかもしれないと、ただそれだけ考えて作った。
「そんなつもりじゃないから」と伝えれば、いち君は「わかってる」と優しく目を細める。
「そうだとしても、凄く嬉しかったんだ。だから俺に何かさせてほしい」
いち君は頼むと、汗をかいたアイスコーヒーをひとくち飲んだ。
カラン、と氷が位置を変えて落ちる音がして。
「思いつかないなら今から探しに行こう」
彼が続けて提案する。