いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


「もしかして、買い物に付き合ってって言ってたのは……」


私はてっきり、いち君の買い物に付き合うのかと思っていたけれど。


「君へのお礼の品物探し」


予想的中。

彼は優雅な微笑みを浮かべて答えた。

「好きなものを買っていいから」なんて言われてしまい、私は慌ててお断りする。


「いらないよ。さっきも言ったでしょ? そんなつもりで作ったんじゃないもの」


気持ちはありがたいけど買ってもらえない。

そう言えば、いち君はしょんぼりと肩を落とした。


「でも、何かしたいんだ」


う、ぐぅ……!

そんな、今にも捨てられようとしてる子犬のような瞳で見ないでほしい。

ないはずの犬の耳が力なく垂れてる幻まで見えそうだ。

そして、私は知っている。

いち君はこうやって自分の意見を通そうとしているのを。

相手と状況を見て、強気に出たり下手に出たり。

こういうところ、企業のトップとしては申し分ない才能だと思う。

それはさておき、さっきから通路を挟んだ隣の席の女性の視線が痛い。

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