いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「簡単なものだけど雰囲気は出るかな? 俺好みの味付けにしたから、もし沙優の口に合わなかったらごめん」
そう言って振舞われたのは、屋台では定番の品々。
焼きそばにたこ焼き、じゃがバター、デザートにカップに入ったりんご飴。
「りんご飴まで! これも?」
「作ってみました」
「凄い……!」
これはもう策略というか、素敵なサプライズだ。
でもこれらを策略だと思って用意してくれているいち君の姿を想像すると、微笑ましくて口元が緩む。
飲み物はお茶でもお酒でもなんでもあるよと言われ、私はお茶をお願いした。
いち君は少しだけ飲もうかなと、見たことのない瓶ビールを冷蔵庫から出してくる。
聞けば、イタリアのビールらしく、苦味が少なくほんのりフルーティーな飲み口だとか。
気づけば太陽は地平線へと落ち始めていて、私たちはそれを眺めながらグラスを合わせた。
いち君が作ってくれた焼きそばが凄く美味しくて、コツを聞いたら日本酒を入れて炒めているのだと教えてくれて、私も次は真似して作ってみると話した。
そうやって食事をしながら、料理や花火の思い出話に花を咲かせていると、いつのまにか窓の外は夜の景色変わっていて。
そろそろかな、なんて話していた矢先、一発目の花火がドン!と大きな音と共に打ち上がった。
「始まった!」
私の声にいち君が頷く。
「大きいね」
「ね! 凄い迫力!」
窓ガラスいっぱいに弾けて咲く花火は圧巻で、私は思わず立ち上がる。
パタパタと下駄を鳴らして窓の前に立つと、二発目が上がった。
月が浮かぶ夜空に、色鮮やかな花火が次々と咲いては散っていく。
負けじと輝く港の夜景も相まって、溢れる光の洪水に圧倒されていると、いち君が私の隣に並んだ。