いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
自分の気持ちを自覚した直後、耳にする届いたのは騒がしい声。
どうやらエントラスでいち君が誰かと会話しているらしく、何か揉めているのかなと、花火の音を聞きながら気にしていたら、ダイニングの方からヒョコッと女性が顔を覗かせた。
そして、私を見つけると顔を輝かせる。
「さーちゃん!?」
「えっ?」
「さーちゃんだ!!」
久しぶりと興奮気味にこちらにやってくるのは、アイドルのようにキラキラとした愛嬌のある女性。
明るい茶色に染められた長い髪と、マスカラたっぷりの長い睫毛。
いきなりのことに私は頭に疑問符を浮かべていたのだけど、私をさーちゃんと呼ぶのは一人しかいないのを思い出し、目を見張った。
「美波ちゃん?」
「そうだよー! 久しぶり、さーちゃん」
美波ちゃんは嬉しそうに抱きついてきて、わたしもまだ少し戸惑いつつも笑顔で抱きしめ返す。
すると、ダイニングの方からまたしても懐かしい人物が登場した。
「こんばんは。沙優お姉さん」
笑みを浮かべながらもおずおずと頭を下げたのは美波ちゃんとよく似た顔の大地君。
「こんばんは。大地君も大きくなったね」
私が二人と最後に会ったのは、彼らがまだ九歳の時だ。
美波ちゃんはお化粧しているから少し気付きにくかったけど、大地君は面影がそのままですぐに思い出せた。