いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


「わー、さーちゃん浴衣素敵!」

「ありがとう」

「美波、落ち着いて」

「久しぶりに会えたんだもん、仕方ないでしょー」


いち君に宥められた美波ちゃんは、頰を膨らませる。

どうやら彼女はあの頃から変わらず天真爛漫なようだ。

外の花火に負けないくらい賑やかになった室内。

美波ちゃんを困ったように見て笑っていた大地君が、あの、と私に声をかけた。


「沙優お姉さん、この前はタルトケーキありがとう」

「そう! 美味しかった」


いち君と会話していた美波ちゃんも戻ってきて笑顔を見せる。


「喜んでもらえて良かった。また機会があれば作らせてね」

「ぜひぜひ! にしても、まさか兄さんがここ予約してたとは。声かけてよ」


花柄のミニスカートを翻し、むくれる美波ちゃん。

そういえば、二人はどうしていち君がここを予約したことを知っていたんだろう。

不思議に思っている間にも、いち君たち兄弟の会話は進んで行く。


「残念だけど、これは沙優へのプレゼントだから」

「えー? ずるいー」

「美波。そろそろ帰ろうよ」


大地君が美波ちゃんの腕を引くと、彼女は瞳を瞬かせた。


「どうして?」

「だって僕ら邪魔だろ?」


申し訳なさそうに私といち君を交互に見た大地君。

その視線に気づいた美波ちゃんが口を開けた。


「あっ、そうか! 兄さんごめんねぇ」


わざとらしく頭をこつんとして笑いながら謝る彼女。


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