いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「二人は今大学生だっけ?」
「はい」
「私はバリバリ就活中でーす」
美波ちゃんが少し面倒そうな顔で言って、ソファーの背もたれに体を預けた。
「いち君と同じようにお父さんの会社で働いたりとかはしないの?」
コネにはなってしまうかもだけど、就活が上手くいかないのなら、父親に頼むのもありなのではと思い尋ねたけれど、美波ちゃんは首を横に振る。
「それはしなくていいって、兄さんに言われてるから」
「好きなことをしていいよって言ってくれてるんです」
大地君がどこか申し訳なそうな、弱い笑みを浮かべれば、美波ちゃんの表情がつまらなさそうに曇った。
「それに、お父さんとあまり関わりたくないから」
「そっか」
これは、あれだろうか。
ある時期がくると毛嫌いする現象。
お風呂は父よりも先がいい。
洗濯物は父のものと一緒に洗わないで。
それが長引いているのか。
はたまた──
「僕らは、完璧でいろと父からそう言われて育ってきたんです。だから、努力してきたんですけど……」
いち君と同じで、原因があり、父親に苦手意識を持っているのか。
「もしかして、二人ともお父さんが苦手?」
というか、眉を寄せる二人を見ていればそれはいち君が父親のことを語る姿と被り一目瞭然だ。
二人も苦笑いあたりを返して来そうだなと予想さていたのだけど、美波ちゃんは苦笑ではなく怒りの表情を浮かべる。
そして……
「そりゃ、偉そうなこと言って不倫を繰り返してるような人は尊敬できないし苦手にもなるよ」
とんでもない話を聞いてしまった。