いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


「気を使ってくれてたのね。ありがとう。でも、私はあまり気にしないから大丈夫。人様の人生をとやかく言えるほど立派な人間ではないし」


そして、自分に不利なことはしないいち君の性格はよくわかっているから、ずるいのはある意味慣れている。

そこに悪意がないことも知っているし。

というか、それだけ結婚したいと考えてくれているのは素直に嬉しい。

いち君はとりあえず私に嫌がられなくて良かったと、肩を撫で下ろした。


「今のところ父の悪評は父が片付けてるから会社に影響は出てないけど、何かあった時は責任取って会社からは手を引いてもらうつもりなんだ。その話をしても、そんなヘマはしないと鼻で笑われたけどね」

「え、女性を取っ替え引っ替えしてるの?」

「そうみたいだよ」

「わー……」


呆れ果てているのか、彼は長い溜め息を吐き出す。

そうか。

いち君は明倫堂の後継ぎだから、父親の女癖は会社としても悩みの種になるんだ。

それは酔い潰れる日もあって当たり前だろう。

しかし、取っ替え引っ替えは危ない。

会社的にもだけど、いつか刺されてしまうのではとさえ思う。

でも、いち君のお父さんはキリッとした顔で年齢の割には若く見えるし、なんせ社長だ。

女性が寄ってくるのもわかる。

わかるけど、好き放題して家族を苦しめるのは理解不能だ。

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