いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
唸る私に、いち君が眉を寄せて笑う。
「もしかしたら、沙優も見たんじゃない? 前に再婚してるのか聞いてきただろ?」
「あ、うん……」
頷いた私は、聖司も参加していた飲み会の帰りに見た光景を思い出す。
あの時、東條社長に寄り添っていたのは──
「もしかして秘書の女性だった?」
思い浮かべた人物のことをいち君が口にして、私は目を見張る。
「そ、そう。知ってたの?」
確かめる私に、いち君はお酒の少なくなったグラスを傾け首を縦に振った。
「あの二人は最近らしいね。四月に彼女が秘書として父につくようになってからだから」
「えっ、早い」
展開もだけど手の早さに脱帽だ。
「他にも一人、長く関係を持っている人もいる。それは、母が生きてた頃からずっと続いてるよ」
「本命ってこと?」
「いや、相手もパートナーがいて、互いになんとなく続けてるだけだと思う。それをね、父は昔から俺たち家族には隠しもしないんだ。話さないけど、バレても隠さない、が正解かな」
なんという開き直り方。
まったくもって理解できない。
そんな態度されたら、家族に対して愛情深い彼なら苦手になるのも頷ける。