いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「結婚のことはひとまず保留でかまわないから、俺と付き合ってほしいんだ」
いつも余裕の態度を見せている彼が、縋るように私の手を取って包み込んだ。
少しだけ、力を込めて。
伝わる体温に、想いに、知らず熱い吐息が零れる。
彼と会うたびに、言葉を交わすたびに、私の中で少しずつ膨れ続けていた想いが喉を迫り上がって。
「……はい」
彼に、応えた。
多分いち君は色好い返事をもらえると予想していなかったのだろう。
または、どうやったら私からイエスと言わせられるか必死に考えていたのかもしれない。
だって、私の返事に一瞬真顔になっていたのだ。
理解が追いついてないとばかりに。
でも、それも数秒だ。
彼は満面の笑みを浮かべると、一気に私との距離を詰めて抱き締めてきた。
そして、耳元で誓う。
「ありがとう! 次は、結婚したいって思ってもらえるように頑張るよ」
苦しいほどの抱擁に、私は苦笑いしながら彼の広い背中に腕を回した。
そうすれば、彼の唇が私の耳元に寄せられて。
「好きだよ」
ストレートな告白が、私の心臓を甘く撃ち抜いた。