いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


まず、ほとんど香りがないのだ。

それからもうひとつ。


「花の中に花がある……んですかね、これ」

「それ、外側のは花びらじゃなくて葉っぱらしいよ。中の小さなやつが花なの」

「へぇー!」


中の小さな花と同じく白いから、てっきり花弁だとばかり思っていたけど、まさかの葉っぱだったとは。

驚きながらも感心していれば、仁美さんはヒールの音を鳴らして自分の部屋へと向かう。

そして、鍵を開けると私を見て。


「ちなみに、花言葉も素敵だからぜひ調べてみるといいわよ」


じゃあ、おやすみ。

そう言い残し、ひらひらと手を振って家の中へと消えていった。

パタン、と扉が閉まって。

私は数秒、腕の中にいるブーゲンビリアを見つめてから彼女に続いて扉を閉める。

……花言葉、なんだろうか。

そういえば、いち君は花が好きだった記憶がある。

大きなお家の広いお庭に温室があって、遊びに行くと彼はいつもそこに入り浸っていたっけ。

懐かしい光景を思い出しながら、さっそく花言葉を調べてみようかと、丸いテーブルの上に花を置いた時だ。

花を包む透明なフィルムの外側に、ブーゲンビリアと同じ白い色の封筒が添えられていることに気づいた。

手に取ってみると、封筒の右下に【いちより】と書いてある。

やっぱりいち君だったと思いながら、封を開けて中に入っている手紙を広げた。

そこには、いち君の綺麗な文字が数行並んでいる。


< 16 / 252 >

この作品をシェア

pagetop