いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
「ふ、普通ですよ?」
「それは普通に順調なのかな?」
引く気はないのか、さらに問いかけてくる社長。
これはもう逃げるが勝ちだと思い、私は腕時計を見た。
「あっ、いけない! 私、これから生地屋さんをまわらないといけなくて。失礼しますねー」
実際このあとはノベルティーに使う生地を探しに行く予定だった。
本当はここで昼食をとってから出るつもりだったけど、もう出先で食べることにする。
私はお弁当箱の入ったトートバッグを手に持ち、椅子から腰を上げて社長に頭を下げるとそそくさと退散。
そんな私の背中を追いかけ尚も声をかけてくる社長。
「おお、頑張ってくれたまえ! もし結婚なんて話になったら、ぜひひとつご贔屓に頼むよ!」
その声に振り返った私は、愛想笑いだけ向けて事務所を後にした。