いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
テーブルを挟み、二人で私の作ったおかずをつまんで。
なんとなくお腹が満たされたところで、壁にかかった時計を見れば、もう日付変更まであと一時間もない。
「いち君、時間大丈夫?」
「俺は平気だけど、沙優が明日辛いのは困るからそろそろ──プッ」
帰ると、言うつもりだったのだろう。
けれどその言葉は紡がれず、代わりに彼は笑った。
何事かとわずかに瞳を瞬かせている私に、いち君は自分の頬を人差し指でトントンと叩いて見せる。
「ついてる」
最初、何をと首を傾げかけて、それが食べ物なのだと理解した私は急いで頬に手を当てた。
「あれ? ここ?」
うまく取れなくて確認すると、彼は小さく笑って「違うよ。はい、こっち向いて」と私の顔をわずかに横向きさせる。
そして、取ってくれようとしているのか、彼は椅子から立ち上がると──
「ここ」
唇の端に、微かな吐息と、温かな感触と、リップ音。
「うん、美味しい」
「い、いい、いち君!?」
慌てて頬を押さえると、いち君がしてやったりと言った顔で微笑む。
「ごめん。美味しそうだったからつい。今度はちゃんと食べさせてね」
「な、なにを!?」