いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~


そもそも、最初は海に行く予定なんてなかった。

金曜の夜、残業していたらいち君からメッセージが入ってきて、どこに行きたいか聞かれたので、暑いから涼みたいねとは返した。

で、任せてくれるかと聞かれてOKした私。

涼むわけだから屋内だろうと勝手に予想していたら、今日、朝早く彼が迎えに来て「海に行こう」と言った時、軽く三秒は停止した。


『何しに?』

『もちろん泳ぎに』

『み、水着持ってきてないよ』

『リゾートに売り場があるから大丈夫。買ってあげるよ』


すでにヘリをチャーターしてあり、今から東京のヘリポートに向かうと言われ、ヘリで行くとか理解が追いつかないままいち君の車に乗り込んだ。

ヘリポートに到着して、いち君の手に引かれながら初めて乗り込んだヘリコプターは、思いの外揺れは少なく乗り心地が良くて快適だった。

渋滞も気にせず移動できるとか最高すぎやしませんかと御曹司パワーに圧倒され、二時間後、到着したのは沖縄。

いち君の説明によると、プライベートヴィラを予約したから、海に行かなくてもプライベートプールもあるよと教えてもらったけれど……


「ここまで来てそれはもったいないな」


空港からレンタルした車を運転するサングラスをかけたいち君が、服のまま砂浜から動かない宣言をした私に「やっぱりプールだけにするか」と聞いてくる。

だけど、私は再びそれはダメだと頭を振った。

夏の沖縄まで来て海に行かないのはありえない。

というか、プールを使うなら結局水着になるわけで、いち君には披露するのだ。

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