いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
ああ、ダメだ。
もうウジウジ悩んでいても仕方ない。
とにかく水着を見よう。
決めるのはそれからだ。
腹をくくると、私は背筋を伸ばす。
「水着はさておき、最大限に楽しまないとね!」
いち君の言う通り、ここまで来たのだ。
楽しまなければ損。
まして、今日は付き合って初めてのデートなのだから。
「ところで、プライベートヴィラって何?」
「戸建ての宿泊施設だよ」
「へぇ〜! 別荘みたいな感じかな?」
「そうだね」
……ん?
宿泊施設?
宿泊施設を予約ってなに。
「ごめん、いち君。確認。今日泊まりなの?」
駐車場に入り、空いているスペースを探す彼に問いかける。
すると彼は平然と「泊まりだよ」と言った。
「聞いてない!」
「当たり前だよ。言ってないし」
あははと笑ういち君は、助手席の後ろに手をまわして車をバックさせている。
まるで抱き寄せるような錯覚に陥るその仕草に一瞬胸が高鳴ったけど、流されるまいと唇を動かした。
「言ってよ!私、何も用意してないよ」
そうなのだ。
泊まりとなれば女は色々と持って来なければならない。
普段からめちゃくちゃめかし込んでいるわけではないけど、それでも最低限のメイク道具は欲しいし、下着だって替えが欲しい。
もちろん買う事はできるけど、ひと言言ってくれればそんなに時間もかけずに準備はできる。
……て、いやいや落ち着こう。
問題はそこじゃなかった。
泊まりの部分だ。