いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
なぜなのか。
それを問いかける間もなく私は彼に背を向けさせられる。
すると、後ろから腕を回されたかと思えば、首もとにひんやりとした何が当たった。
「少し早いけど」
「何? え?」
それは、ハート形のダイヤが月の光に照らされて輝くネックレス。
驚いて振り返ると、いち君は小さく笑う。
「まだ気づいてなんだ。明日、なんの日?」
「日曜日」
「じゃあ、何月何日?」
「八月……えっと、そう、五日で──あ」
その日付が意味するものに気づいた私は口を開けた。
すっかり忘れていたのだ。
正確に言えば、先月の半ばあたりには一度思い出した。
仕事のスケジュールを立てる時に、ふとそういえばもうすぐだと思ったのだ。
でも、ここ数年は仕事が忙しくて祝ったりしていない。
両親や友人からメッセージをもらって気づくことも多かった。
そして、今年も綺麗に忘れていたのだ。
「誕生日だ」
「そう、君の誕生日だよ」
甘く端正な顔に笑顔を浮かべて、いち君は言葉を続ける。
「ワガママで申し訳ないけど、君の誕生日には一番にお祝いを言いたくて。本当は日付が変わってすぐにおめでとうと言いたかったけど、体調もあるし、明日、朝一番でもいいかな」