いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
真っ直ぐな眼差し
ああ、楽しかった。
美味しいケーキも食べて、大輪のひまわりの花束も貰って。
離れていた十二年分の誕生日を埋めるほどの充実した二日間。
その余韻に浸りながら、朝の満員電車に揺られる。
満員と言っても、世の学生さんたちは夏休みに突入しているから、車内はいつもよりも余裕があった。
胸元にはバースデープレゼントにもらったダイヤのネックレス。
今日はブラウスの中に隠れて見えないようにしている。
理由はもちろん、事務所のみんなに勘ぐられそうだからだ。
明倫堂の御曹司からもらったのでは、なんて言われて違いますと嘘をつくのも心苦しい。
『毎日つけてくれると嬉しいな』
口づけのあと、囁かれて頷いた私はその時考えもしていなかった。
いち君との約束を守るには、服に気をつけなればいけないなんて。
秋冬ならいいけど、夏はかなり難しい、というかきつい。
襟が詰まってる服はやはり少し暑いし、何より数が少ないのだ。
今日、早く上がれたらデパートに寄ろう。
心に決めて、私は人の熱気溢れる電車から降りた。