いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~

真っ直ぐな眼差し



ああ、楽しかった。

美味しいケーキも食べて、大輪のひまわりの花束も貰って。

離れていた十二年分の誕生日を埋めるほどの充実した二日間。

その余韻に浸りながら、朝の満員電車に揺られる。

満員と言っても、世の学生さんたちは夏休みに突入しているから、車内はいつもよりも余裕があった。

胸元にはバースデープレゼントにもらったダイヤのネックレス。

今日はブラウスの中に隠れて見えないようにしている。

理由はもちろん、事務所のみんなに勘ぐられそうだからだ。

明倫堂の御曹司からもらったのでは、なんて言われて違いますと嘘をつくのも心苦しい。


『毎日つけてくれると嬉しいな』


口づけのあと、囁かれて頷いた私はその時考えもしていなかった。

いち君との約束を守るには、服に気をつけなればいけないなんて。

秋冬ならいいけど、夏はかなり難しい、というかきつい。

襟が詰まってる服はやはり少し暑いし、何より数が少ないのだ。

今日、早く上がれたらデパートに寄ろう。

心に決めて、私は人の熱気溢れる電車から降りた。


< 189 / 252 >

この作品をシェア

pagetop