いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~
いち君からそれを聞いたのは三日後だ。
仕事が終わり、帰宅して。
入浴を済ませた直後にベッドサイドテーブルで充電中のスマホが彼からの連絡を告げた。
メッセージではなく着信だったので、もしかしてという予感を持ちながらディスプレイに表示されている通話ボタンをタップする。
『お疲れさま。家に着いた?』
いつも帰る前にいち君に「これから帰るよ」というメッセージを送っている私。
もちろんいち君も同じように教えてくれるのだけど、私の場合は必ず連絡するように言われている。
理由は単純明快。
心配だから、だ。
「うん。もうお風呂にも入ったよ」
『逆上せて倒れたりしなかった?』
からかい混じりの声に、私はつい最近の失態を思い出し苦笑する。
「してません」
『ごめん、冗談。でも、俺がいないんだから気をつけて。お風呂で寝たりしないように』
助けてあげられないからねと釘を刺されて、私は素直に「はーい」と返事をした。
まだ水分補給を行なってないことを思い出し、冷蔵庫を開ける。
電話の向こうのいち君も何か飲んでいるのか、グラスがコトリとテーブルか何かに置かれたような音が聞こえた。