いとしい君に、一途な求婚~次期社長の甘い囁き~

秘密に触れて



蝉の声が聞こえる。

短い一生を力いっぱい謳歌するような鳴き声を耳に、私は明倫堂のドアをくぐった。

ここに訪れるのは今回で三度目。

でも、恋人という関係になってからは初めてだ。

お互いに大人だし、今までも仕事の時はある程度節度を持って接していた。

恋人へと関係がステップアップしたからといって、そこが何か変わるわけじゃないけれど、なんというか、やっぱり意識はしてしまうと思う。

なので、変な対応をしないようにと気を引き締め、吉原さんの案内で会議室に向かう。

彼女は今日も極上の女オーラを放ち、私の前を歩いている。

キュッとくびれた細い腰。

タイトなスカートからスラリと伸びる綺麗な足。

本日も魅惑的なバラの香りを漂わせる吉原さんは、ふと歩む速度を遅めて私を振り返った。


「あの、真山さん」

「はい!」

「はじめさんとは、どんな関係なんですか?」


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